◎ブランディング的な「良き体験」について。

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今日、Facebookに、
 
ビジネス系のクラウドサービスで、チャット形式の問合せを初めて使ってみたが、なかなか良い体験だった。問題自体の解決はまだ80%程度だが、こちらの時間の奪われ方が最小で済み、なおかつ確実に解決に進んでいる実感がある、という感じだろうか。いい!
 
と投稿したので、その出来事について、若干の追記しようとしたら、長くなりそうだったのでブログに書くことに。WEB系のサービスをやってらっしゃる方には当然のことも多いと思いますんで、その筋の方は読み飛ばしてください。笑
 
ちなみに、ビジネス系のクラウドサービスというのは、ズバリ、Makeleaps(メイクリープス)さんです。「クラウドで見積・納品・請求書をかんたん作成・郵送できる。最も簡潔で多彩な機能を備えた、ビジネス向けのクラウド請求ソフト。」というのが、自社を説明するタグラインのようですね。オススメです!

Makeleaps(メイクリープス)
 
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インターフェイス的な観点でいうと、作業画面の「邪魔にならず、かつ視認性の確保された場所」に、スタッフと思われる方の顔写真アイコンと実名が掲出されていて、「現時点で少なくとも3人が稼働中であることがわかる」というのは、問合せをしてみようと、思わせるに十分な仕掛けだなと思った。多すぎてもウルサイだけなので、3人くらいでちょうどいいのかな、というのが感想。
 
で、「チャットだし、即座にちゃんとレスしてくれるんだろうな」と妄想したから、問い合せるという行動に繋がった。それで、「良き顧客体験」が届けられ、ブランドイメージは上がる。これが問合せしないで、「そもそも大したお困りごとじゃないんだし、、、」とひとりで悶々と解決しようとすると、ユーザーは「ナニコレ使いにくいヤダ」という体験を重ねることになり、ブランドイメージは下がる。この差は実に大きくて、1年後のブランド力に確実に影響する。
 
ブランドの実態は、顧客の体験と感情で、その積み重ねがブランド力を形成しているんですよ、と説明することが多いんだけど、まさに今回の出来事はその具体例にちょうどいい。そもそも、問合せたい状況になっているということは、顧客体験としてはダークサイド。それを「良き体験」に転換する仕掛けが、メイクリープスさんにはあったので、下がりかけていたブランドイメージが向上し、結果として、私は解約しないし(既存顧客のリテンション)、何ならもっとちゃんとこのサービスを使ってみよう、とさえ考える(既存顧客からのクロスセルやアップセルの可能性)。もし友人知人に「請求書、どうしてます?」なんて聞かれたらメイクリープスを「いいよ!」と言って紹介する(新規顧客の獲得の可能性)、という好循環に。
 
ところが、問合せないで「悪しき体験」が積み重なった場合、悪くすれば解約されてしまう可能性もあるし、友人に紹介してもらえるどころか、名指しで「やめたほうがいい」というネガティブなクチコミになるリスクがある。この開きが、ブランド力に直接的に影響するので、「小さな顧客体験」はあなどらない方がいい。
 
運営サイドの立場で考えれば、ちょっとのことで問合せが来てもな、、、という気持ちになるかもしれないけど、そうでもない。前述のように、顧客体験を向上させ、売上向上に貢献するだけでなく、エスノグラフィー※的なユーザー行動の観察として「どんなところでつまづくのか」のローデータが集まるので、商品・サービスの品質改善につながるし、結果として問合せを減らしていく方向に舵を切れる。一石三鳥。
※エスノグラフィー:もともとは文化人類学などの研究手法。10年程前から、ユーザー観察の方法として、マーケティング領域や、新規事業創造の領域で使われることが増えた。
 
そもそも、問合せをするという行為自体が、ユーザーにとって面倒極まりないんで(ここ大事!)、普通は、よっぽどのお困り事でないと問合せをしてくれない。でも、ユーザーは「小さなつまづき」はいっぱいしていて、それが無料で集まるなんて宝の山!!!エスノグラフィー的な手法でユーザー調査したら、ウン百万円かかりますから!!!
 
で、最後に、最初のインターフェイスの話に戻るけど、正直、顔写真とか実名とかいらん、と思ってたんですよ。同じインターフェイスから、運営会社発信の連絡事項っぽいことも流れてくるので、顔写真いらんと思ってました、すみません。笑
 
でも、今回は、年末年始の営業日のお知らせがあったんで、ログインと同時にそのアイコンが開いてたことが幸を奏したことに。この機能は、通常は小さく畳まれたアイコンになって画面下部にあるので「邪魔にならず」なんですが、今回は「視認性の確保された場所」にあったわけです。これまでの体験によって、閉じたらアイコンが小さくなって作業画面上に残ることを知っていたし、そこから質問が出来るっぽいことも知っていた。もしこの機能がFAQに特化してたら、そういう理解を蓄積する機会が、ユーザー側にないわけよね。だから、通常の連絡事項と一緒で正解!ときどきデーンと視認性の高いエリアに登場させて、いじらせといて正解!
 
加えて、顔写真や実名も、一方通行の情報受信だけでなく、(ユーザー発信で)インタラクティブになった途端にめっちゃ意味を持つんだな、と実感した次第でして、まんまとメイクリープスさんの仕掛けにはめられました、の巻。

蛇足:
Makeleaps(メイクリープス)って、フツーの日本人が一発で読めない、ってのはもったいないっす。。